六道輪廻サバイバル日記別館

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ライブラリー

三島由紀夫と戦後日本








三島由紀夫 名言集




ある人は崇拝し、ある人は罵倒する。

私のような凡人には理解しがたい点が多々あることは事実ですが、

一方で、理解したい、分かりたいという衝動に駆られてしまう人物ではあります。




男が女より強いのは、腕力と知性だけで、

腕力も知性もない男は、女にまさるところは一つもない。

出典三島由紀夫「第一の性」より



死といふ事実は、いつも目の前に突然あらはれた山壁のやうに、

あとに残された人たちには思はれる。

その人たちの不安が、

できる限り短時日に山壁の頂きを究めてしまはうとその人たちをかり立てる。

かれらは頂きへ、かれらの観念のなかの「死の山」の頂きへかけ上る。

出典三島由紀夫「罪びと」より



男の虚栄心は、虚栄心がないやうに見せかけることである。

出典三島由紀夫「虚栄について」より



空虚な目標であれ、目標をめざして努力する過程にしか人間の幸福が存在しない。

出典三島由紀夫「小説家の息子」より





大人と青年の議論









芸術家といふのは自然の変種です。

出典三島由紀夫「反貞女大学」より

世界が必ず滅びるといふ確信がなかつたら、

どうやつて生きてゆくことができるだらう。

出典三島由紀夫「鏡子の家」より



女性はそもそも、いろんな点でお月さまに似てをり、お月さまの影響を受けてゐるが、男に比して、すぐ肥つたりすぐやせたりしやすいところもお月さまそつくりである。

出典三島由紀夫「反貞女大学」より



五十歳の美女は二十歳の美女には絶対にかなはない。

美女と醜女とのひどい階級差は、美男と醜男との階級差とは比べものにならない。

出典三島由紀夫「をはりの美学 美貌のをはり」より



男性は、安楽を100パーセント好きになれない動物だ。

また、なつてはいけないのが男である。

出典三島由紀夫「あなたは現在の恋人と結婚しますか?」より



裏切りは、かならずしも悪人と善人のあひだでおこるとはかぎらない。

出典三島由紀夫「あなたは現在の恋人と結婚しますか?」より



神聖なものほど猥褻だ。だから恋愛より結婚のはうがずつと猥褻だ。

出典三島由紀夫「鏡子の家」より



ユーモアと冷静さと、男性的勇気とは、いつも車の両輪のやうに相伴ふもので、

ユーモアとは理知のもつともなごやかな形式なのであります。

出典三島由紀夫「文章読本」より



無神論も、徹底すれば徹底するほど、唯一神信仰の裏返しにすぎぬ。

無気力も、徹底すれば徹底するほど、情熱の裏返しにすぎぬ。

出典三島由紀夫「川端康成氏再説」より



どんなに平和な装ひをしてゐても「世界政策」といふことばには、

ヤクザの隠語のやうな、独特の血なまぐささがある。

出典三島由紀夫「終末感と文学」より



なぜ大人は酒を飲むのか。

大人になると悲しいことに、酒を呑まなくては酔へないからである。

子供なら、何も呑まなくても、忽ち遊びに酔つてしまふことができる。

出典三島由紀夫「社会料理三島亭 折詰料理『日本人の娯楽』」より



若さが幸福を求めるなどといふのは衰退である。

出典三島由紀夫「絹と明察」より



感傷といふものが女性的な特質のやうに考へられてゐるのは明らかに誤解である。

感傷的といふことは男性的といふことなのだ。

出典三島由紀夫「青の時代」より



男性は本質を愛し、女性は習慣を愛する

出典三島由紀夫「青の時代」より



男が金をほしがるのはつまり女が金をほしがるからだといふのは真理だな。

出典三島由紀夫「青の時代」より



人間、正道を歩むのは却つて不安なものだ。

出典三島由紀夫「青の時代」より

嫉妬こそ生きる力だ。

出典三島由紀夫「盗賊」より



自殺しようとする人間は往々死を不真面目に考へてゐるやうにみられる。否、彼は死を自分の理解しうる幅で割切つてしまふことに熟練するのだ。かかる浅墓さは不真面目とは紙一重の差であらう。しかし紙一重であれ、混同してはならない差別だ。

出典三島由紀夫「盗賊」より



何のために生きてゐるかわからないから生きてゐられるんだわ。

出典三島由紀夫「盗賊」より



女が一等惚れる羽目になるのは、自分に一等苦手な男相手でございますね。

出典三島由紀夫「美徳のよろめき」より



法律とは、本来ごく少数者のためのものなのだ。ごく少数の異常な純粋、この世の規矩を外れた熱誠、……それを泥棒や痴情の犯罪と全く同じ同等の《悪》へおとしめようとする機構なのだ。

出典三島由紀夫「奔馬」より



真の危険を犯すものは理性であり、その勇気も理性からだけ生れる

出典三島由紀夫「暁の寺」より



ほしいものが手に入らないといふ最大の理由は、

それを手に入れたいと望んだからだ。

出典三島由紀夫「暁の寺」より



潔癖さといふものは、欲望の命ずる一種のわがままだ。

出典三島由紀夫「仮面の告白」より



この世に一つ幸福があれば必ずそれに対応する不幸が一つある筈だ

出典三島由紀夫「天人五衰」より



幸福つて、何も感じないことなのよ。幸福つて、もつと鈍感なものよ。幸福な人は、

自分以外のことなんか夢にも考へないで生きてゆくんですよ。

出典三島由紀夫「夜の向日葵」より



一分間以上、人間が同じ強さで愛しつづけてゆくことなんか、不可能のやうな気があたしにはするの。愛するといふことは息を止めるやうなことだわ。一分間以上も息を止めてゐてごらんなさい、死んでしまふか、笑ひ出してしまふか、どつちかだわ。

出典三島由紀夫「夜の向日葵」より



正しい狂気といふものがあるのだ。

出典三島由紀夫「小説家の休暇」より



男の世界は思ひやりの世界である。

男の社会的な能力とは思ひやりの能力である。

出典三島由紀夫「葉隠入門」より



「強み」とは何か。知恵に流されぬことである。分別に溺れないことである。

出典三島由紀夫「葉隠入門」より



もし、われわれが生の尊厳をそれほど重んじるならば、どうして死の尊厳をも重んじないわけにいくだらうか。いかなる死も、それを犬死と呼ぶことはできないのである。

出典三島由紀夫「葉隠入門」より



この日本刀で人を斬れる時代が、早くやつて来ないかなあ。

出典三島由紀夫「日録(昭和42年)」より



青年の苦悩は、隠されるときもつとも美しい

出典三島由紀夫「青年像」より



何か、極く小さな、どんなありきたりな希望でもよい。

それがなくては、人は明日のはうへ生き延びることができない。

出典三島由紀夫「愛の渇き」より



人生が生きるに値ひしないと考へることは容易いが、それだけにまた、生きるに値ひしないといふことを考へないでゐることは、多少とも鋭敏な感受性をもつた人には困難である。

出典三島由紀夫「愛の渇き」より



生きることが難しいなどといふことは何も自慢になどなりはしないのだ。

出典三島由紀夫「愛の渇き」より



あまりに永い苦悩は人を愚かにする。

苦悩によつて愚かにされた人は、もう歓喜を疑ふことができない。

出典三島由紀夫「愛の渇き」より



女といふものは、自分を莫迦だと知る瞬間に、

それがわかるくらい自分は利巧な女だといふ循環論法に陥るのですね。

出典三島由紀夫「魔群の通過」より



善意も、無心も、十分人を殺すことのできる刃物である。

出典三島由紀夫「日曜日」より



恋人同士といふものは仕馴れた役者のやうに、

予め手順を考へた舞台装置の上で愛し合ふものである。

出典三島由紀夫「日曜日」より



寡黙な人間は、寡黙な秘密を持つものである。

出典三島由紀夫「日曜日」より



歌舞伎役者の顔こそ偉大でなければならない。

出典三島由紀夫「偉大な姉妹」より



不安は奇体に人の顔つきを若々しくする。

出典三島由紀夫「毒薬の社会的効用について」より



戦争が道徳を失はせたといふのは嘘だ。道徳はいつどこにでもころがつてゐる。しかし運動をするものに運動神経が必要とされるやうに、道徳的な神経がなくては 道徳はつかまらない。戦争が失はせたのは道徳的神経だ。この神経なしには人は道徳的な行為をすることができぬ。従つてまた真の意味の不徳に到達することも できぬ筈だつた。

出典三島由紀夫「慈善」より



個人が組織を倒す、といふのは善である。

出典三島由紀夫「個人が組織を倒す道徳――『サムライ』について」より



論敵同士などといふものは卑小な関係であり、言葉の上の敵味方なんて、

女学生の寄宿舎のそねみ合ひと大差がありません。

出典三島由紀夫「野口武彦氏への公開状」より



どんな時代にならうと、権力のもつとも深い実質は若者の筋肉だ。

出典三島由紀夫「わが友ヒットラー」より



女を抱くとき、われわれは大抵、顔か乳房か局部か太腿かをバラバラに抱いてゐるのだ。

それを総括する「肉体」といふ観念の下(もと)に。

出典三島由紀夫「鍵のかかる部屋」より



理想的な「他人」はこの世にはないのだ。

滑稽なことだが、屍体にならなければ、人は「親密な他人」になれない。

出典三島由紀夫「牝犬」より



女は決して征服されない。決して!男が女に対する崇敬の念から凌辱を敢てする場合がままあるやうに、この上ない侮蔑の証しとして、女が男に身を任す場合もあるのだ。



愛する者はいつも寛大で、愛される者はいつも残酷さ。

出典三島由紀夫「禁色」より



この世には最高の瞬間といふものがある。

この世における精神と自然との和解、精神と自然との交合の瞬間だ。

出典三島由紀夫「禁色」より



死 は事実にすぎぬ。行為の死は、自殺と言ひ直すべきだらう。人は自分の意志によつて生れることはできぬが、意志によつて死ぬことはできる。これが古来のあら ゆる自然哲学の根本命題だ。しかし、死において、自殺といふ行為と、生の全的な表現との同時性が可能であることは疑ひを容れない。最高の瞬間の表現は死に 俟たねばならない。

これには逆証明が可能だと思はれる。

出典三島由紀夫「禁色」より



男といふものは、もし相手の女が、彼の肉体だけを求めてゐたのだとわかると、

一等自尊心を鼓舞されて、大得意になるといふ妙なケダモノであります。

出典三島由紀夫「不道徳教育講座 痴漢を歓迎すべし」より



やたらと人に弱味をさらけ出す人間のことを、私は躊躇なく「無礼者」と呼びます。

出典三島由紀夫「不道徳教育講座 告白するなかれ」より



このごろは、ベタベタ自分の子供の自慢をする若い男がふえて来たが、

かういふのはどうも不潔でやりきれない。

アメリカ人の風習の影響だらうが、誰にでも、

や たらむしやうに自分の子供の写真を見せたがる。

かういふ男を見ると、私は、こいつは何だつて男性の威厳を自ら失つて、人間生活に首までドップリひたつてや がるのか、と思つて腹立たしくなる。

「自分の子供が可愛い」などといふ感情はワイセツな感情であつて、

人に示すべきものではないらしい。

出典三島由紀夫「不道徳教育講座 子持ちを隠すべし」より



そんなに、「どうせ私なんぞ」式外交ばかりやらないで、

たまにはゴテてみたらどうだらう。さうすることによつて、

自分の何ほどかの力が確認されるといふものであります。

出典三島由紀夫「不道徳教育講座 何かにつけてゴテるべし」より



美しい女と二人きりで歩いてゐる男は頼もしげにみえるのだが、

女二人にはさまれて歩いてゐる男は道化じみる。

出典三島由紀夫「春子」より



事件に直面して、直面しながら、理解することは困難である。理解は概ね後から来て、そのときの感動を解析し、さらに演繹して、自分にむかつて説明しようとする。

出典三島由紀夫「真夏の死」より



打算のない愛情とよく言ひますが、打算のないことを証明するものは、打算を証明するものと同様に、「お金」の他にはありません。打算があつてこそ「打算のない行為」もあるのですから、いちばん純粋な「打算のない行為」は打算の中にしかありえないわけです。

出典三島由紀夫「宝石売買」より



政治的スローガンとか、思想とか、さういふ痛くも痒くもないものには、人間は喜んで普遍性と共有性を認めます。毒にも薬にもならない古くさい建築や美術品は、やすやすと人類共有の文化的遺産になります。

出典三島由紀夫「美しい星」より



天才というものは源泉の感情だ。そこまで堀り当てた人が天才だ。

出典三島由紀夫 河上徹太郎との対談「創作批評」より

何を守ればいいんだと。ぼくはね、結局文化だと思うんだ。

出典三島由紀夫 福田恆存との対談「文武両道と死の哲学」より



日本人は絶対、民主主義を守るために死なん。ぼくはアメリカ人にも言うんだけど、「日本人は民主主義のために死なないよ」と前から言っている。今後もそうだろうと思う。

出典三島由紀夫 福田恆存との対談「文武両道と死の哲学」より



人間をいちばん残酷にするのは、愛されてゐるといふ意識だよ。

出典三島由紀夫「禁色」より



崇高なものが現代では無力で、滑稽なものにだけ野蛮な力がある。

出典三島由紀夫「禁色」より



あ らゆる忠義によるラジカルな行動を認めなければ、天皇制の本質を逸すると僕は言っているわけです。場合によっては共産革命だって、もし錦旗革命だったら天 皇は認めなければならないでしょうね。天皇制の本質なのかもしれませんよ。それをよく知らないで、右翼だとかファッショだといってバカにしきって戦後共産 党がやっていたのは共産党がバカだといいたいね。

出典三島由紀夫 大島渚との対談「ファシストか革命家か」より



私は民主主義と暗殺はつきもので、共産主義と粛清はつきものだと思っております。共産主義の粛清のほうが数が多いだけ、始末が悪い。たとえば暗殺が全然なかったら、政治家はどんなに不真面目になるか、殺される心配がなかったら、いくらでも嘘がつける。

出典三島由紀夫「国家革新の原理――学生とのティーチ・イン」より



私は、言論と日本刀というものは同じもので、何千万人相手にしても、俺一人だというのが言論だと思うのです。一人の人間を大勢で寄ってたかってぶち壊すのは、言論ではなくて、そういうものを暴力という。つまり一人の日本刀の言論だ。

出典三島由紀夫「国家革新の原理――学生とのティーチ・イン」より



どんな政治体制でも歴史的な基盤があって、徐々に形成されたものであるので、その点では日本の天皇制もまったく同じだと思います。ですから民主主義が悪いと か、天皇制がいいとか悪いとかいう問題じゃなくて、その国その国の歴史的基盤に立った政治体制ができていくということは当然だと思います。

出典三島由紀夫「国家革新の原理――学生とのティーチ・イン」より



国家がなくなって世界政府ができるなんという夢は、非常に情けない、哀れな夢なんです。

…資本主義国家も国家が管理している部分が非常に大きくなっておりますから、実際の国家の時代という点では、国家の管理機能はむしろ史上最高ぐらいまで達しているのではないか。

出典三島由紀夫「国家革新の原理――学生とのティーチ・イン」より



共産社会に階級がないというのは全くの迷信であって、これは巨大なビューロクラシーの社会であります。そしてこの階級制の蟻のごとき社会にならないために 我々の社会が戦わなければならんというふうに私は考えるものですが、日本の例をとってみますと、日本にどういうふうに階級があるのか、まずそれを伺いたい。

たとえばアメリカなどは民主主義社会とはいいながら、ヨーロッパよりさらに古い、さらに深い階級意識がある国です。というのは、ヨーロッパを真似して 成金が階級をつくったのですね。

ですからこれはアングロ・サクソンの文化の伝統ですが、クラブというのがありますね。

みんなメンバーシップオン リーのクラブで、下のクラブの人が上のクラブをステイタス・シンボルとして、ステイタス・クライマーが上流のクラブへ入るためにあらゆる算段をするわけです。

(中略)

アメリカにはステイタス・シンボルというものが非常にたくさんあります。

出典三島由紀夫「国家革新の原理――学生とのティーチ・イン」より



日本ではステイタス・シンボルに当たるものが私は何があるのかと聞きたい。

出典三島由紀夫「国家革新の原理――学生とのティーチ・イン」より



今 の時代はますます複雑になって、新聞を読んでも、テレビを見ても、真相はつかめない。そういうときに何があるかといえば、自分で見にいくほかないんだよ。 いま筋の通ったことをいえば、みんな右翼といわれる。だいたい、“右”というのは、ヨーロッパのことばでは“正しい”という意味なんだから。(笑)

出典三島由紀夫 鶴田浩二との対談「刺客と組長――男の盟約」より



天皇の本質というものが誤られてしまった。だから石原さんみたいな、

つまり非常に無垢ではあるけれども、天皇制廃止論者をつくっちゃった。

出典三島由紀夫 石原慎太郎との対談「守るべきものの価値」より



時間を支配しているのは女であって、男じゃない。妊娠十ヵ月の時間、これは女の持物だからね。だから女は時間に遅れる権利があるんだよ。

出典三島由紀夫 寺山修司との対談「エロスは抵抗の拠点になり得るか」より



僕 は、単細胞のせいかもしれないけれど、革命というものはイデオロギーの問題でもなんでもない、ただ爆弾持って駈け出すことだと思っているんです。維新とい うのも、ただ日本刀持って駈け出すことだと思っている。駈けるのには、百メートルを十六秒以下でなければ駈けるとは言えない。そのためには、ふとってい ちゃ絶対だめですよ。

出典三島由紀夫 石川淳との対談「破裂のために集中する」より



今の日本の大威張りの根拠は、みんな西洋発明品のおかげである。

これはそもそも、大東亜戦争の航空機についてさえ言えることで、あの戦争が日本刀だけで戦ったのなら威張れるけれども、みんな西洋の発明品で、西洋相手に戦ったのである。

ただ一つ、真の日本的武器は、航空機を日本刀のように使って斬死した特攻隊だけである。

出典三島由紀夫「お茶漬ナショナリズム」より



好奇心には道徳がないのである。

もしかするとそれは人間のもちうるもつとも不徳な欲望かもしれない。

出典三島由紀夫「仮面の告白」より



年をとらせるのは肉体じやなくつて、もしかしたら心かもしれないの。心のわづらひと衰へが、内側から体に反映して、みにくい皺やしみを作つてゆくのかもしれないの。

出典三島由紀夫「黒蜥蜴」より



ちつぽけな希望に妥協して、この世界が、

その希望の形のままに見えて来たらおしまひだ。

出典三島由紀夫「鏡子の家」より

愛は断じて理解ではない。

出典三島由紀夫「批評家に小説がわかるか」より



世間が若い者に求める役割は、

欺され易い誠実な聴き手といふことで、それ以上の何ものでもない。

出典三島由紀夫「天人五衰」より



老人はいやでも政治的であることを強いられる。

出典三島由紀夫「天人五衰」より



ヒットラーは政治的天才であつたが、英雄ではなかつた。英雄といふものに必要な、爽やかさ、晴れやかさが、彼には徹底的に欠けてゐた。ヒットラーは、二十世紀そのもののやうに暗い。

出典三島由紀夫「『わが友ヒットラー』覚書」より



いくら成人式をやつたつて、二十代はまだ人生や人間に対して盲らなのさ。

大人がしつかりした判断で決めてやつたはうが、結局当人の倖せになるんだ。

出典三島由紀夫「音楽」より



精神分析を待つまでもなく、人間のつく嘘のうちで、

「一度も嘘をついたことがない」といふのは、おそらく最大の嘘である。

出典三島由紀夫「音楽」より



どんな不キリョウな犬でも、飼ひ馴れれば、可愛くなる。

幸福といふものは、どうしてこんなに不安なのだらう!

出典三島由紀夫「永すぎた春」より



私があるとき死はない、死があるとき私はない。

だから人間は死を怖れることはないのだ。

出典三島由紀夫「永すぎた春」より



人生とは何だ? 人生とは失語症だ。世界とは何だ? 世界とは失語症だ。歴史とは何だ?歴史とは失語症だ。芸術とは? 恋愛とは? 政治とは? 何でもかんでも失語症だ。

出典三島由紀夫「獣の戯れ」より



どんな女にも、苦悩に対する共感の趣味があるものだが、

それは苦悩といふものが本来男性的な能力だからである。

出典三島由紀夫「純白の夜」より



恋愛とは、勿論、仏蘭西(フランス)の詩人が言つたやうに一つの拷問である。どちらがより多く相手を苦しめることができるか試してみませう、とメリメエがその女友達へ出した手紙のなかで書いてゐる。

出典三島由紀夫「純白の夜」より



どんな卑俗な犯罪にも、一種の夢想がつきまとつてゐる。

出典三島由紀夫「黒蜥蜴」より



僕はいはゆる美人を見ると、美しいなんて思つたことはありません。

ただ欲望を感じるだけです。

不美人のはうが美といふ観念からすれば、純粋に美しいのかもしれません。

何故つて、醜い女なら、欲望なしに見ることができますからね。

出典三島由紀夫「女神」より



女の人には、自分で直感的に見た鏡が、いちばん気に入る肖像画なんです。

それ以上のものはありませんよ。

出典三島由紀夫「女神」より



私を美しいと云つた男はみんな死んぢまつた。だから、今ぢや私はかう考へる。私を美しいと云ふ男は、みんなきつと死ぬんだと。

出典三島由紀夫「卒塔婆小町」より



経 済学の学説なんぞといふものは、どつちみち如意棒のやうなもので、エイッと声をかけて、耳へ入るだけの小ささに変へてしまへばやすやすと握りつぶせるので ある。そもそも唯物論は、『金で買へないものは何もない、どんな形の幸福も金で買へる』といふ資本主義的偏見の私生児なのである。



感動すまいとする分析家は、感動以上の誤りを犯す場合がままある。

出典三島由紀夫「青の時代」より



いくら乱れた世の中でも、一本筋の通つたまじめな努力家の青年はゐるもんだよ。

小心で優柔不断らしい女が、男を不幸にしてゐる

出典三島由紀夫「お嬢さん」より



微笑は、ノー・コメントであり、「判断停止」「分析停止」の要請である。こんなことは社会生活では当たり前のことで、日本のやうに個人主義の発達しない社会では、微笑が個人の自由を守つてきたのである。しかもそれは礼儀正しさの要請にも叶つてゐる。

出典三島由紀夫「アメリカ人の日本神話」より



伝統は野蛮と爛熟の二つを教へる。

真の戦争責任は民衆とその愚昧とにある。





政治家は民衆の戦争責任を弾劾しない。彼らは、泰西人がアジアを怖るゝ如く、民衆をおそれてゐる。この畏怖に我々の伝統的感情の凡てがある。その意味で我々は古来デモクラチックである。



日本的非合理の温存のみが、百年後世界文化に貢献するであらう。

出典平岡公威(三島由紀夫)昭和20年9月16日「戦後語録」より



人生は夢なれば、妄想はいよいよ美し。

出典平岡公威(三島由紀夫)昭和20年9月16日「戦後語録」より

あらゆる種類の仮面のなかで、「素顔」といふ仮面を僕はいちばん信用いたしません。

出典三島由紀夫 昭和22年11月4日、林房雄への書簡より



愛といふ言葉は、日本語ではなくて、多分キリスト教から来たものであらう。日本語としては「恋」で十分であり、日本人の情緒的表現の最高のものは「恋」であつて、「愛」ではない。



日本のやうな国には、愛国心などといふ言葉はそぐはないのではないか。すつかり藤猛にお株をとられてしまつたが、「大和魂」で十分ではないか。

出典三島由紀夫「愛国心」より



「子供らしくない部分」を除いたら「子供らしさ」もまた存在しえない。



大人が真似ることのできるのはいはゆる「子供らしさ」だけであり、子供の中の「子供らしくない部分」は決して大人には真似られない部分である。

出典三島由紀夫「師弟」より



偽 悪者たることは易しく、反抗者たり否定者たることはむしろたやすいが、あらゆる外面的内面的要求に飜弄されず、自身のもつとも蔑視するものに万全を尽くす ことは、人間として無意味なことではない。「最高の偽善者」とはさういふことであり、物事が決して簡単につまらなくなつたりしてしまはない人のことであ る。



人間は自由を与へられれば与へられるほど幸福になるとは限らない。

出典三島由紀夫「最高の偽善者として――皇太子殿下への手紙」より



われわれの死には、自然死にもあれ戦死にもあれ、個性的なところはひとつもない。しかし死は厳密に個人的な事柄で、誰も自分以外の死をわが身に引受けることはできないのだ。



決してわれわれは他人の死を死ぬのではない。原爆で死んでも、脳溢血で死んでも、個々人の死の分量は同じなのである。



自分の死の分量を明確に見極めた人が、これからの世界で本当に勇気を持つた人間になるだらう。まづ個人が復活しなければならないのだ。

出典三島由紀夫 「死の分量」より









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